ある獣医病理学者のブログ

動物の病気あるいは死体の専門家からみた、色んな動物や科学に関すること

外見では判断できないけれど、障害を抱えて日常生活に
支障をきたしている方が結構たくさんいらっしゃる、
ということをご存知でしょうか。

杖をついている、怪我をしている、車椅子など、
明らかに不自由な方に対しては、電車内で席を
譲られたり、街中で介助されたりする光景を
見ることが多いです。

しかし、体の内部の臓器障害、発達障害、精神障害
など、見た目では分からない、見えない障害を
抱えている方が実はたくさんいます。

私もクローン病という、外見上は健康な人と変わり
ませんが、結構重い消化管の病気を抱えています。

クローン病は消化管のあらゆる部位に難治性の炎症が
生じる疾患で、原因不明で治療法も確立されていない
ことから、厚生労働省により指定難病に
指定されています。

クローン病では口から肛門までの消化管のあらゆる
部位に炎症や潰瘍が生じるため、病変ができる部位や
程度によって、症状は非常に多彩です。
下痢、下血、発熱、腹痛、貧血、体重減少、
全身倦怠感、肛門周囲膿瘍、複雑痔瘻など。

症状がひどいときには下痢で一日に何度もトイレに
駆け込むことがあり、正直外出するのが嫌になる
ことも少なくありません。
貧血で歩けないこともあり、発熱が持続し、
全身がだるい状況が何日も続きます。

食べ物に含まれる脂質が消化管の病態を悪化させるため、
食事が強く制限されます。
脂質を多く含む肉類、乳製品、お菓子、加工食品、
インスタント食品のほか、粘膜に刺激を与える香辛料、
カフェイン、食物繊維なども控えなければなりません。
食べられる物を探すことの方が難しいくらいです。

消化管に炎症が起きると、炎症産物である白血球の
死骸、いわゆる膿(うみ)が生じます。膿が溜まって
塊を作ったものが膿瘍(のうよう)です。
炎症によって溜まった膿は、
どこかに排出しなければなりません。

クローン病では、行き場を失った膿を排泄する
トンネル状の道の瘻管(ろうかん)が消化管の
外側にできて、それが隣り合う腸とくっついて
癒着します。さらに瘻管が皮膚とつながれば、
皮膚から体外へ膿が排泄されます。

クローン病の合併症で多いのが、膿が肛門周囲に
排泄される、いわゆる痔瘻(じろう)です。
肛門周囲に膿瘍がいくつも形成され、それが破れて
複雑な痔瘻となることが特徴です。
正直なところ、かなりの激痛です。

クローン病では、見た目は健康で元気そうに見える
けど、実は全身がだるくて熱があり、下痢、
お腹の痛み、複雑痔瘻の痛みを抱えている
患者さんが多くいます。

クローン病が厄介なのは、10代から20代の若年者に
発症が多いことです。
そのため、受験や就職に悪影響を及ぼす場合が
少なくありません。
私も20代前半でクローン病と診断され、
日常生活に支障をきたして、絶望を感じて
夢を諦めた時期があります。

これから受験を頑張って夢を叶える、希望に
満ちあふれた仕事に就く、という大切な時期に
クローン病と診断されることは、
本当に筆舌に尽くしがたいもの
です。

貧血や全身倦怠感で歩けない、下痢や痛みで勉強や
仕事に集中できない、食事制限が厳しい。
ひどい場合には、入院して長期間の絶食が
必要な場合もあります。
やりたいことがたくさんあって、これから色々と
頑張りたい時期である10〜20代の患者さんにとって、
これらの制限が本当に辛いです。

私自身は幸いなことに薬のおかげで、今は比較的
普通の生活ができています。
ただし、原因が分からず根本的な治療法もないこと、
今の薬が効かなくなったら別の薬に切り替えるという、
いたちごっこになる可能性があるため、
いまでも不安を感じています。

見た目は若くて健康そうに見えるけど、実は外見では
分からない障害があって、不自由な思いをし
ている人がけっこうたくさんいる。
ということを、
少しでも多くの方に知ってほしいと思っています。

そう考えると、例えば電車の優先席に座っている
若者を見ても、あの人はもしかしたら見えない障害を
抱えている人かもしれない、と気づくかもしれません。

たくさんの人が思いやりを持つことで、優先席が
なくても当たり前のような社会になってほしいです。

世の中には、見た目では判断できないことが
たくさんあります。
外見にとらわれることで、本当に大切なことを
見逃してないでしょうか。

人でさえ外見で判断できないことが多いですから、
動物では、さらに見た目で判断することは困難です。
苦しむことなく安らかに亡くなったと思ったけど
実は病変だらけだった、事故死だと思ったら
感染症だった、など、死後に剖検をしたら、予想に
反する死因が明らかになることがよくあります。

動物は、自ら言葉を話すことができません。
そうであるならば、誰かが動物の本当の声を拾って
伝えなければなりません。
動物の遺体には、病気と戦いながら生きてきた証が
病変となって刻まれています。
私は死後の剖検をとおして、動物の遺体と対話
しながら、そのメッセージを伝えていきたいと
思っています。

今回は、見えない障害をテーマとして取り上げて、
見た目では判断できないことがたくさんあるという
ことをお伝えしました。
いま目の前で起きていることの背景には、そうなるに
至った経緯があるのではないか。こう考えることで、
今まで気づかなかった視点が得られるかもしれません。

ちなみにクローン病は潰瘍性大腸炎と合わせて、
炎症性腸疾患(IBD)と総称されています。

人と動物では、同じ病気がたくさんありますが、
人にしかない病気、動物にしかない病気もあります。
人のIBDは人にしかなく、動物で同じ病気はありません。
ただし、犬や猫でもIBDと呼ばれる消化管の病気がありますが、人のIBDとは全く異なる病気です。その他にも、鶏のIBD、ヘビのIBDと呼ばれる病気もあります。
以前にブログで取り上げましたので、
よければ見てください。
http://vetpath.blog.jp/archives/10683888.html
IMG_5467

IMG_2417

近年、人と動物との関係は急速に変化しています。

時代の移り変わりとともに動物との関係は変わるものなので、
変化自体は避けられるものではありません。

しかしながらその変化があまりにも速すぎて、対策が追いついていかない場面が
いろいろと出てくるように思われます。

 

最近の、そしてこれからの人と動物との関わりを考えると、
感染症が問題になることがますます増えてくるだろうと考えています。


動物と動物、動物と人との間で直接または間接的に接触する機会が増えれば、
それだけ病原体が移動する頻度も増え、動物間または人
動物間で感染症が
発生するリスクが高くなります。

 

伴侶動物

犬や猫などの伴侶動物は、単にかわいがる、番犬やネズミを捕獲するといった使役目的の
飼育から、現在では家族同様の存在となっています。しかし家族と同じといっても、

人に接するのと同様、あるいはそれ以上の過剰な接触や触れ合いには注意が必要です。

 

コリネバクテリウム・ウルセランス感染症、重症熱性血小板減少症(SFTS)など、
伴侶動物から人に感染した病気が最近話題となりました。

残念ながら亡くなった方もいます。

 

動物との接触が濃密であればあるほど、動物が保有している病原体に暴露されやすくなり、
人へ感染する可能性が高まります。
動物にとっては病気を起こさない微生物でも、
人に感染すると病気を引き起こすこともあります。
伴侶動物は家族であるものの、
本来人とは違う種類の動物であるということを理解してください。

 

過剰な触れ合いを避け、触れた後は適度な手洗いやうがいをすることが重要です。

とくに、粘膜(口や鼻など)や傷口は微生物が侵入しやすいところなので、
そういった場所を舐められないように気をつけましょう。

 

日頃から動物の健康管理に気をつけることは言うまでもありません。

体調を崩したりストレスにさらされたりすると、免疫が低下して、普段は病気を
起こさないような病原体によって感染症が引き起こされる可能性もあります。

いわゆる日和見(ひよりみ)感染症です。

 

動物の体調が悪いとき、または飼い主の体調が悪いときには、できるだけ接触を避け、
手洗いやうがいも念入りにしておきたいものです。

 

犬の場合、十分気をつけていたとしても、散歩の際にダニがついてしまうことがあります。

血液を吸血するマダニは、SFTSをはじめ色々な病原体を伝播させる可能性があります。

法律で義務付けられている狂犬病ワクチンは当然ですが、その他の任意のワクチン、
フィラリアやマダニの予防や駆虫は定期的に必要と思います。

 

猫は、感染症の観点からも室内飼育が原則です。

猫を守るだけでなく、私たちが様々な病原体に暴露されないためにも重要です。

 

野良猫を安易に触ることも避けたいものです。

自分自身が感染するだけでなく、野良猫に由来する病原体が手や衣服に付着して、
機械的に他の場所に運んでしまう可能性だってあります。

野良猫に触れたまま家に帰ったり猫カフェに訪れたりすることで、愛猫や猫カフェの猫に
病原体を感染させてしまう、ということも考えられます。

 

動物病院はたくさんの動物が出入りするので、院内感染のリスクが
全くないわけではありません。

動物病院に連れて行ったのに、院内感染で具合が悪くなったら元も子もないですよね。

 

院内感染の防止を意識した動物病院はどんなところか。

もちろん、日頃から掃除や消毒が徹底されていて、
清潔な動物病院であることはいうまでもありません。

 

私が重要視しているところは、獣医師やスタッフが腕時計や指輪をしていない

ということです。

腕時計や指輪をしていると、十分な手洗いができず手を清潔に保てません。

微生物が付着した手でそのまま次の動物を診察することが、
院内感染の原因となる場合もあります。

 

エキゾチック動物

厳密な定義はありませんが、犬や猫以外の、いわゆるエキゾチック動物と
呼ばれる動物を飼育されている方もたくさんいます。

小型げっ歯類、ウサギ、フェレット、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、無脊椎動物など。

 

私は魚類や無脊椎動物から哺乳類まで、いろいろな動物の病理解剖、病理検査を
していますが、最近ではヨツユビハリネズミやフクロモモンガ、ミニブタが
持ち込まれることが多く、ブームを反映しているものと思われます。

 

エキゾチック動物の中には国内外で繁殖された個体が出回っている種類もありますが、
野生動物を捕獲してペット用に流通させるということも依然としてあります。

これらの動物には体表にダニが付着していたり、体の中に寄生虫がいたり、
あるいは目には見えない病原体を保有していることがあります。

 

犬や猫でさえ過剰な接触は危険な場合があることを考えると、エキゾチック動物に
対してはさらに注意しなければなりません。

飼育の歴史が浅いエキゾチック動物には、本来触れるべきじゃない動物も多い
ということを理解してください。

 

海外から動物とともに持ち込まれた病原体が、国内で新たな宿主を見つけて拡散する
という可能性も考えておかなければなりません。


海外から持ち込まれた外来生物が、新たな環境に適応して在来種を駆逐していく、
と同じことが、目には見えない病原体の世界でも起こらないとは言い切れません。

感染症の観点からも、安易なペットの放棄は危険です。

 

産業動物

産業動物では、豚に豚コレラが発生したことが直近では話題となりました。

この夏は中国でアフリカ豚コレラが発生し、また、国内に持ち込まれた肉製品から
アフリカ豚コレラウイルスが検出されたということもありました。

 

この十数年に限っても、口蹄疫による牛や豚、高病原性鳥インフルエンザによる
鶏の被害が報道されて、産業動物の感染症がたびたび世間を騒がせています。

 

近年の畜産の傾向としては、畜産農家数は減っている一方、一つの農家で飼育している
動物の数が増えている、すなわち大規模化しているのが特徴です。

大規模化しているということは、万一感染症が発生すると、
たくさんの動物が犠牲になり、壊滅的な被害を及ぼします。

 

産業動物の重要な感染症の中には、人や物(靴や車など)、餌などに付着した
病原体が感染源となるものがあります。

獣医師や畜産関係者が、知らない間に病原体を運んでしまっている場合もあります。

その他には、野生動物が感染源となることもあります。

 

産業動物の感染症を防ぐために私たちができること

獣医師や畜産農家にとっては、感染症の脅威は身にしみて感じていることから、
農場や畜舎に出入りする際には細心の注意を払っています。

 

このことは、一般の方にはあまり知られていないように思います。

一般の方にとって、身近でない産業動物を間近にみると、伴侶動物と同じような
感覚で撫でたり触れたりしたくなるのが普通じゃないでしょうか。

 

しかし、安易に触れることによって、産業動物の病原体を機械的に運んでしまう
可能性を常に考えなければいけません。

 

観光牧場などでは、実際に家畜と触れ合えるところもありますが、そういったところを
訪れる際には、施設に入る前と出る時に適切な手洗いをしてください。

服や靴に動物の唾液や毛、糞便などが付着した場合は、すぐに洗濯してください。

そのままの服や靴でまた別の動物飼育施設を訪れることは厳禁です。

 

動物園・水族館動物

動物園や水族館には、4つの役割があります。

①種の保存、②教育、③調査研究、④レクレーション

これらを果たす大前提として、感染症対策が動物園獣医師に課せられた重要な役割です。

感染症によって貴重な動物が犠牲になるだけでなく、動物園スタッフや来園者にも
影響が及ぶ危険性もあることから、多くの施設では細心の注意が払われています。

 

来園者にも注意すべきことがあります。

手に届くところに動物がいても、安易に動物に触れないこと。
そして、食べ物を勝手にあげないこと。
これらは感染症対策のためにも重要です。当然のことですよね。

 

一方で、ふれあいコーナーや餌やり体験ができる場所では、動物と触れ合った後は
しっかり手洗いをする、ということは十分周知されていることと思います。

しかし、動物と触れ合う前も手洗いが必要ということも忘れないでください。

触れ合う前に手洗いをすることは、
私たち人から動物へ病原体を感染させないために重要です。

 

野生動物

近年、シカやイノシシによる農業被害、ニホンザルやクマの出没といったニュースを
見ることが頻繁になってきました。

アライグマをはじめとする外来生物による被害も日常的になっています。

 

これらのことは、外来生物も含めた野生動物と人との距離が
近くなっていることを意味します。

野生動物と人のみならず、野生動物と伴侶動物、産業動物、動物園動物との
距離も近くなっており、直接または間接的に接触する頻度が高まっていると思います。

 

そして、野生動物と接触する頻度が高まれば、本来自然の環境で感染サイクルが
形成されていた病原体が、人に暴露される危険性を生みます。

あるいは、野生動物から伴侶動物、産業動物、動物園動物を介して、
人に病原体が暴露される可能性も考えられます。

 

エボラ出血熱やSARSなど、近年出現したいわゆる新興感染症の多くは、
野生動物に由来する病原体です。

 

野生動物がどういう病原体を保有しているのか、野生動物の死因は何か、
ということは、実はブラックボックスとなっています。

しかし、人やその他の動物への影響を考えると、野生動物の病気を理解しておく
必要性を深く感じています。

 

野生動物の病気を理解することは、野生動物や自然環境を守ることにつながり、
ひいてはそれが私たちやその他の動物を守ることにつながります。

私は野生動物の剖検をすることも多いですが、
野生動物の病気はまだまだ分からないことだらけです。

 

今後感染症が問題となるであろうということは、
動物との接触頻度の問題だけではありません。

気候変動や環境の変化に伴って、病原体のベクターとなる蚊やダニといった
節足動物の分布や行動パターンが変わることも、新たな感染症の脅威となり得ます。

 

本来、自然環境では、多様な生物が相互に関係し合って複雑な生態系を構成しています。
その中には病原体や微生物も含まれます。

これからは、動物の体の中の病原体や微生物も含めて自然環境、
生態系の保全や再生といったことを考えていかなければならないと思います。

 

最後に

感染症は、決して過去の病気ではありません。

世界では依然として様々な感染症が発生しており、国内でも例えば結核は、
他の先進諸国と比較してもかなり高い罹患率です。

 

今後、人や物が世界中を短時間で移動することはさらに加速します。

また、糖尿病や慢性腎疾患の増加、免疫抑制剤などの長期間の服用、
HIV感染者の増加など、易感染状態にある人がますます増加していくと思われます。
薬剤耐性菌や生物テロの問題もあります。

 

感染症のことを考えると不安要素がたくさんありますが、過度の心配は必要ありません。


・動物との行き過ぎた触れ合いは避ける

・触れてもいい動物、触れるべきでない動物がいるということを理解する

・触れる前と触れた後には手洗いやうがいをする

・動物の健康管理には気をつける

・自分自身が病原体を機械的に運んでしまうことがある

・体調が悪いと感じたら、医療機関を受診する

・動物に由来する感染症を診断してもらうためには、
 動物との接触歴を医師に説明することが重要

 

こういったことを注意することで、
自分自身や家族、動物を感染症から守ることができます。

 

大事なのは、人と動物との距離感

伴侶動物、産業動物、動物園動物、野生動物には、それぞれに応じた触れ合い方があり、
触れ合うべきじゃない場合もあります。

 

日本人は、どんな動物も一様にペットをかわいがるような感覚で、
触れたがるような気がします。

しかし、家族同様の存在である犬や猫でされ、濃厚な触れ合いはときに
危険であることを理解しておいてください。

 

とくに、野生動物はむやみに触れないことが重要です。

人、伴侶動物、産業動物、動物動物のいずれについても、
これからの感染症を考えるうえで、野生動物との接触を避け、
野生動物に由来する感染症を防ぐことが極めて重要です。

 

一つだけ注意点があります。

感染症が怖いからといって、過度に動物との接触を避けたり、
必要以上に手洗いや消毒をやり過ぎることは、それはそれで問題があります。

 

大事なのは、適切な距離感を保ってほどほどの程度にするということです。

犬や猫などの伴侶動物とはスキンシップがお互いの絆のためには大切ですが、
どういった行為が感染しやすいかを理解する。
そして手を洗うべき時はきちんと手洗いする。エキゾチック動物の中には、
飼育の歴史が浅く触れるべきじゃない種類もいるということ。そして、
産業動物や野生動物まで、ペットと触れ合うときのような感覚で触れないこと。

 

もう一つ大切なこと。
それは、動物と触れることで自分自身の感染を防ぐことはもちろんですが、
自分を介して他の動物や人に感染させないということです。

自分は大丈夫だとしても、お年寄りや子どもは免疫が弱く、
少量の菌や病原性が弱い病原体によっても感染し、症状が重篤になることがあります。

 

私たちの皮膚や消化管をはじめとする体には、人の体を構成する細胞の数よりも
たくさんの微生物たちがいます。そういった微生物たちが、
病原菌が付着して増殖するのを防ぐ役目を果たしています。

 

微生物が存在する限り、感染症は必ず問題となります。
一方、病気を引き起こす微生物以上の数の、私たちにとって有益な微生物たちもいます。

そのため、微生物を根絶することは不可能です。

 

「敵を知り、己を知ること」 を理解して、動物と接することです。

感染症が今後も避けられないのであれば、感染症を防ぐためにはこれにつきます。

これからも、そういった役立つ情報を提供できればと思っています。
IMG_6050
 

テレビでは、毎日のように何らかの動物を扱う番組が放送されています。

伴侶動物、野生動物、動物園や水族館動物、産業動物、外来生物など。

 

動物に癒される、動物の生き方に学ぶ、動物の生態を理解する、自然保護を考える、
命の尊さを学ぶ・・・

どの番組も、概ねこういった目的があるでしょうか。

このような傾向は、何十年も前から変わっていないような気がします。

 

番組を通して動物のことを知ることで、進化って不思議だ、多様性が大事、
人と動物や環境はつながっている、・・など知的好奇心を育んだり、自然保護の重要性や
命の大切さを理解したり、学ぶべきことはたくさんあります。

情操教育へ果たす役割もある程度あると思います。

 

その一方で、一部では安易な飼育を促すことになりかねない放送や、罰ゲームと称して
動物を雑に扱うなど、虐待と取られかねない内容も以前から変わらず散見されます。

 

動物番組の傾向は昔からあまり変わらず、そして欠けていると感じているものがあります。

それは、「死」の視点です。

 

人を含めて、どんな動物にも必ず死が訪れます。

テレビでは、生きている動物の姿は毎日のように見るのに、動物がなぜ死ぬのか、
どのようにして死んでいくのか、死んだらどうなるのか、残された人や動物は
どうするべきか、といったことが取り上げられることは非常に少ないです。

 

なぜ、これほどまでに死が忌避されているのでしょうか。

 

最近では、多くの人が自宅ではなく、病院で亡くなる時代となっています。

私の祖父母の時代には、庭先で鶏や、農作業のために牛を飼う光景が普通に見られました。

スーパーでは、加工された食品がすっかり定着し、魚の切り身やカットされた食肉から
生きていた動物に思いを馳せ、犠牲に感謝して食べるという機会も少なくなっています。

 

以上のことを考えると、
死がだんだんと私たちにとって身近な存在ではなくなってきていると感じています。

 

死が身近なものではないことは、

死とはどういうものか、死ってよく分からない、死は何となく怖い、
死のプロセスを理解できない、ということにつながります。

 

私は、これまでたくさんの動物の病理解剖をとおして、数々の死と向き合ってきました。
ときには獣医師や農家、飼い主、飼育員の方と、死について議論をしたこともあります。

 

たくさんの動物の死、そして残された人や動物たちと関わってきて、いま思うこと。

それは、「死」と向き合うことなしには、「生」を理解できない
、ということです。

 

人も動物も、生き方は様々ですが、いつか必ず亡くなります。

生き様を見るだけでは、生きていくうえでの教訓は十分に得られません。

残された私たちや動物たちがより良く生きていくためには、死を理解し、
死から教訓を導いていく必要があります。

 

生きている動物と向き合うだけでは、命の尊さも十分に理解はできません。

 

普段意識することは少ないですが、動物の死は、日常の至るところに溢れています。

良い意味も悪い意味も含めて、
たくさんの動物の犠牲によって私たちは生かされているわけです。

このことは、私たちが生きていくためには、どうしても避けられません。

 

動物がかわいいとか、かわいそうとか感じるのは、私たちから動物への一方向の思いです。

動物が死して私たちに伝えたいことは何だろうか。

様々なかたちで動物たちを利用して生きているならば、動物の死にもっと焦点を当てて、
死から学び取る努力が必要です。

 

少子高齢化が進み、死が身近な存在では亡くなった現在、もっと動物の死に焦点が
当てられてもいいような気がします。


動物の死と向き合うことは、病気や死の理解につながります。病気や死に伴う痛みや
苦しみを考えることによって、自分や他者を大切にするという感情も芽生えるのでは、
とも考えています。

 

死については、人によっていろいろな考えがあります。

しかし、死を忌避して議論を避けていると、得られるものは何もありません。

私たちがより良く生きていくために、いま、
あらためて「死」というものを真剣に考える時がきています。

 

私たちが動物に対して抱くイメージ、あるいは考えや感情は、
動物番組によるものが大きいのではないでしょうか。

そう考えると、動物観や死生観へ及ぼす影響は計り知れません。

 

これまでとは違う視点で、動物の死を考える動物番組があってほしい。

 

動物の死を考えるきっかけとなるものとして、
当ブログでは今後も様々な動物の死について紹介していきたいと思います。
IMG_5891
 

↑このページのトップヘ