私には夢があります。

それは、動物の死因究明を専門とする施設を作ること。

(自分一人でできるものではないので、まだそこまで具体的には考えていません)

 

動物の死因究明を通して、動物の病気に関する情報を集積し、それを動物の健康、
人の健康、ひいては自然環境の健康のために役立てたいと思っています。

 

私たちのまわりには、伴侶動物、使役動物、産業動物、動物園・水族館動物、
野生動物、実験動物、水産動物、昆虫など様々な動物が存在し、
そのほとんどが何らかのかたちで人間と関わっています。

 

しかし、テレビの動物番組や報道内容を見ていても、動物に関する話題になると
「かわいい」や「かわいそう」という感情で
終わってしまっていることが多いように感じています。

 

それ自体はごく自然な感情なので悪いことではありません。問題はそう感じたとして、
そこから何ができるかを考えなければいけないということです。

 

動物の死は、私たちが普段意識する以上に身近にあり、
たくさんの動物の恩恵を受けて私たちは生かされています。

様々なかたちで動物を利用して生きている以上、動物の死に対して、
もっとしっかりと向き合うべきではないでしょうか。

 

動物の死因究明センターでは、動物の死因を明らかにして情報発信することで、
「死」から「生」を学ぶきっかけを提供したいと思っています。

 

人では死因究明制度の不備により、犯罪の見逃しなど死因にまつわる様々な問題が
指摘されています。
しかし、動物ではそれ以上に死因が明らかにされることはありません。

 

伴侶動物では、獣医療の発達に伴う診断・治療の検証や獣医療過誤、

産業動物や水産動物では、今問題になっている豚コレラのように、人や物の
グローバルな移動に伴って新たな感染症の発生が懸念されています。

 

動物園や水族館では、今後は飼育個体の入手が困難となるため、一頭一頭の死も
無駄にできず、もっと死から学んでそれを共有する努力が必要です。

 

野生動物では近年、生息環境の変化などの要因から人との距離が近くなり、
野生動物の病気が人にもたらされる心配があります。
しかし、野生動物にどのような病気があって、人にどのような影響があるのかは
ほとんど明らかにされていません。

 

その他全ての動物に共通することとして、動物虐待の検証、
または動物福祉の観点から動物が適切に飼育されてきたのかを
死因究明によって明らかにしていかなければいけません。

この点から、獣医法医学という分野を新たに確立していきたいと思っています。

 

動物の死を扱う上でよく問題になるのが、どこがそれを担当するのかということ。

動物の種類や問題の性質によって、農林水産省、厚生労働省、環境省、
あるいは警察など、たらい回しにされることも少なくありません。

 

動物の死因究明センターでは、そういった様々な動物を受け入れ、
情報発信をしながら、適宜関連する機関と連携していく必要があります。

死因を究明することで問題を明らかにして、
動物、人や社会、さらには自然環境に貢献したいです。

 

人の動物との関係は時代によって変わるものですが、現代の目まぐるしい
社会情勢の変化は、人と動物との関係をも急速に変えているかもしれません。

 

動物が「かわいい」、「かわいそう」で終わるのではなく、動物のために何ができるのか。

どのようにすれば人と動物、自然環境がより良く生きていけるようになるか。

 

動物の死因究明を通して、それを考える材料を提供できればと思います。それは、
良い意味でも悪い意味でも様々な動物を利用して生きている私たちの責任でもあります。

 

動物の遺体には、声なき動物のメッセージが込められています。

今、私たちは動物の死としっかり向き合い、そこから学ぶ努力を
しなければいけない時がきているのではないでしょうか。
IMG_7957