色々な動物を病理解剖しているなかで、「この子は最期に苦しんだのでしょうか」という質問を飼い主の方から受けることがあります。

 

正直なところ、私にも判断できないことが多くて何とも申し上げられません。急死や老衰などの場合は、おそらく苦しむことなく亡くなったとお伝えしています。

 

病気になった動物が、実際どのように感じているかは分かりません。しかし、体のつくり、痛みやストレスなどを感じるシステムやそれに対する反応は、私たち人間と多くのところで共通しています。

 

嗅覚や視覚、聴覚など動物種によって発達の程度に違いはあるものの、体のつくりや反応は私たちと同じである以上、私たちが苦しい、痛い、しんどいと思うことは、やはり動物にとってもそうなのだろうなと考えています。

 

いずれにしろ死は動物にとっても飼い主にとっても、苦しいことに変わりありません。大事なことは、動物が苦しみを乗り越えて死に向かっているときに、飼い主がしっかりそばに寄り添ってあげることではないでしょうか。

 

動物を飼うことは、楽しいことばかりではありません。いつかは病気になって、必ず別れのときがやってきます。飼い主にとって大切なことは、動物の病気や死や別れといった悲しみに直面したときに、逃げずにしっかり向き合ってあげることだと思います。

飼育放棄することはもってのほかです。

 

動物は飼い主を選べません。ペットにとっては飼い主の存在が全てです。苦しいことは誰だって動物だって嫌ではあるけれど、そんなときにそばに飼い主がいればそれだけで動物は安心するものと思います。

 

死を前にしてできるだけ動物が苦しまないようにするためには、予防できる病気は予防して、病気を早期に見つけることも大切です。

 

動物の病理解剖をしていると、もうちょっと早く病気を見つけてあげれば、あるいは適切な治療を受けていればこれほど苦しまなかったであろう動物をけっこう見ます。

 

動物の死には、悲しみや後悔が必ず付きまといます。あのとき動物病院に連れて行けば良かった、もっとこうしてあげれば良かった、手術をした方がもっと長く生きられたのではないだろうか。そんな後悔を少しでも減らして、動物との別れに伴う悲しみを乗り越えるためには、やはり予防できるものは予防して、病気の早期発見を心がけるしかありません。

 

様々な原因で亡くなった動物を病理解剖していると、どの動物も最期まで生きようとしていたんだなと気付かされます。そんなとき、たとえ苦しかったり痛かったりしても、飼い主がそばにいてくれるだけで、動物の気持ちもきっと安らぐものだと思います。