病理医が主人公の漫画「フラジャイル」の12巻が発売されました。
今回は病理検査の外注問題と、病理医1年目の宮崎先生のデビュー戦がテーマ。
病理医は患者と直接に接する機会が少なく認知度は低いですが、医療を陰で支えてくれる、
なくてはならない存在です。
臨床医が正確な臨床診断をするためには病理医の存在が不可欠ですが、
病理医が顕微鏡で正確な病理診断をするためには、
臨床検査技師の存在も絶対に無視できません。
この漫画は、一般の方の目に触れる機会が少ない病理医や臨床検査技師に
焦点を当てているところがすごいと思います。
病理医がどういうことをやっているのかは、実は臨床医やその他の医療従事者
にとっても分からないことが多いかもしれません。
病理医がどのように考え、ときに悩み、病理診断を下しているのか。
その意味でも病理医の日常を描くフラジャイルはとても意義深いものです。
フラジャイルでは複数の病理医が登場しますが、どの先生もかなり変な人です。
クセがあって考えも色々なのに、いずれの先生も言っていることは正論。
正論に対抗するには正論しかないと思わせるところも実に病理医らしいです。
私は獣医病理医かつ研究者ですが、人の病理医と共通するところが多く、
獣医病理の世界にも非常にクセがある先生が多いです。
フラジャイルで病理医が登場するたびに、この先生は獣医ではこの先生っぽい
などと当てはめながら読んで楽しんでいます。
病理医の大きな特徴の一つとして、病理診断を通して様々な専門の医師と
接する機会があるということがあげられます。
フラジャイルの見どころは、その特徴を活かして病理医から見た医療の現実、
様々な問題を知ることができるところにあります。
これまでもいくつかの社会的に重要なテーマが取り上げられてきました。
一般の方、そして医師をはじめ医療従事者にとっても学ぶところが多く、
かつ楽しめる漫画ですので、次巻も期待しています。
漫画のタイトルとなっているフラジャイルという言葉の意味も気になるところです。
Fragile=壊れやすい、もろい
様々な解釈があると思いますが、この漫画でもときどき垣間見ることができる、病理医を通してみた医療制度の脆弱さ、というところにあるのではと個人的には思っています。