まるで舌が二枚あるかのように、前後の矛盾したことやウソを言うことを、俗に二枚舌といいます。実際に舌が二枚あったらびっくりしますよね。

 

でも実は、本当に二枚の舌がある動物がいるのです。

それはキツネザル、ロリス、ガラゴといった、原猿類と呼ばれる原始的なサルのグループです。

 スローロリスはペットとしてブームにもなり、不法な輸入で問題になることが度々あります。

 

これらのサルには、舌の下に小さな舌があって、実際に二枚の舌があるのです。学生の頃、初めてキツネザルを解剖したときに感動しました。なぜ二枚の舌があるのかは、よく分かっていません。

 

これらのサルには他にも共通することがあります。

下顎(したあご)の前歯が櫛(くし)またはコームのように密生していて、櫛歯とよばれる特徴的な歯のつくりをしています。

この櫛歯は毛づくろいのためにあるとされています。

 

コームのような細かい歯で毛づくろいをしたら、毛や食物などがすぐに引っかかってしまうと思いませんか?そんな絡まった毛などを取り除いたり、櫛歯のケアをするために二枚目の舌があると言われていますが、実際のところはどうなのか分かりません。

 二枚目の舌には味覚を感知する受容器がないので、味を感じる役目はなさそうです。

 

そしてもう一つ、これらのサルに共通することがあります。

それは、後ろ足の人差し指だけがかぎ爪になっているということです。

他の指の爪はみんな私たちと同じ平爪なのに、そこだけなぜか、かぎ爪なのです。

かぎ爪も毛づくろいのためといわれています。


毛づくろいが、この動物にとってはとても大切ということなのでしょうか。

 

二枚の舌、櫛歯、かぎ爪。

動物園でキツネザルを見かけたら、ぜひじっくりと観察して探してみてください。双眼鏡を持参するのも良いでしょう。

ゾウやキリン、カバといった動物園の花形的な存在だけでなく、キツネザルのような動物たちを時間をかけてよく観察するというのも色々な発見があって、それはそれで動物園の楽しみ方の一つになると思います。